薪ストーブを導入するとなると、概算で薪ストーブの値段の倍はかかると言われている。
最低でも煙突の工事費がそれくらいはするということ。
だから薪ストーブのカタログばかり見ていてもダメ。
家の設計図をみながら煙突のことも考えないといけないのだ。
煙突の重要性
薪ストーブには煙突がついているのは当たり前だが、
煙突の役割りについては正確なところ知らない人は多い。
薪ストーブで薪が燃やされてでた煙を外に出すくらいに
思っている人が多いだろう。
興味のない人の認識はその程度のものだ。
僕も、実際使うようになってから、
学んで知ったことは実に奥深い原理だった。
ただの、筒が、である。
煙突の太さ、長さ、形状によって性能は決まるのだ。
煙突の出口と気温との温度差が大きければ大きいほど
上昇気流(ドラフト)が発生し、
煙を吸い上げると同時に、
薪ストーブに新鮮空気を送り込む。
薪ストーブと煙突が一体的なシステムとすれば、
煙突は煙を吐き出すポンプの役目をしているといえよう。
ストーブ本体より重要
たとえどんなに高価で高性能の薪ストーブだとしても、
煙突のドラフトが十分でないと、
薪ストーブ本来の能力は発揮されない。
煙突あっての薪ストーブなのだ。
煙突の性能は太さ、長さ、形状によって決まるが、
・煙突は断面積が大きい方がよい。
・煙突は高いほうがよい。
・煙突は曲りが少なく真っすぐな方がよい。
ほかに下記の公式によると、煙突内の温度と外気の温度の差が大きい方がよい。
これは2重煙突がシングル煙突よりも良いことの根拠となっている。
煙突効果とは、煙突の中に外気より高温の空気があるときに、高温の空気は低温の空気より密度が低いため煙突内の空気に浮力が生じる結果、煙突下部の空気取り入れ口から外部の冷たい空気を煙突に引き入れながら暖かい空気が上昇する現象をいう。
例として、高さ 25 m の煙突で煙突内部温度が 250 ℃(紙が燃えだすおよその温度)で外部気温が 20 ℃ の場合、内外の圧力差は約 130 Pa と小さいが、給気速度は約 10.4 m/秒となり100 m を約 9.6 秒で進む。これは陸上競技の 100 m 走の世界記録より速い、煙突頂上まで 5 秒弱で到着する。これは、高層ビルの火災で煙は人間の駆ける速度より早く広がっていく事を意味する。
引用元:wikipedia
上記公式によると、ドラフトは、
煙突の断面積に、
煙突高さ・煙突内部と外気の温度差の平方根に、
それぞれ比例するということである。
具体的な数値を当てはめてみると、
106Φの煙突を120Φに交換すると28%
106Φの煙突を150Φに交換するとなんと200%にアップする。
200%はにわかに信じがたいが、
薪ストーブの性能にあった煙突径を使うことは重要だ。
煙突の高さは、
4mを5mにすると、12%
4mを6mにすると、22%に性能はアップする。
煙突は曲りが少なく真っすぐな方がよい、
というのは公式の要素には含まれていないが、
煙の流れが滞るため、ススがたまりやすく
煙突そうじもやりにくく
部材が多くなりコスト高となり、
悪いことづくめなのだ。
中古住宅に薪ストーブを導入する場合は、
どうしても曲りを避けることはできないかもしれないが、
新築で初めから薪ストーブの設置を考えているならば、
間取りを調整して設計段階で
煙突を真っすぐに配置できるようにしたい。
煙突設置基準とは?
煙突を設置する場合、
法的に守らなければいけないこと。
簡単にまとめると、
- 煙突は可燃物から15cm以上離す
- 煙突の開口部(先端)は屋根から60cm以上離す
以上は最低限守らなければいけないこと。
しかし、それらを守っていたからと言って、
薪ストーブが効率よく燃えているとは限らない。
上記2つの項目を守ったうえでおこなってもらいたい3つ項目がある。
- 煙突は4.5m以上高くし、横引きは1.5m以内におさえる。
- 排気口から水平距離3m以内に屋根の頂部がある場合は頂部より60cm以上高くする
- 屋内では壁から45cm以上、天井から60cm以上離す(シングル煙突の場合)
この3項目をおさえると、煙突の性能と安全性がグーッと上がる。
最低限の目安だから、もっともっと改善の余地はあるだろう。
自己責任で薪ストーブライフを楽しんでみよう!
最近、DIYで流行しているロケットストーブについて。
燃焼方式が薪ストーブとは違い、
室内設置型はロケットストーブ本体から
煙を押し出す原理になっていて、
薪ストーブではありえない横引き長さを実現している。
とても興味深い。
【薪ストーブ関連の法令】
・建築基準法施行令 第115号(建築物に設ける煙突)
・建設省告示 第1404号(ペレットストーブの煙突に関する建築基準法適用除外)
・国土交通省告示 第225号(内装制限の緩和)
・国土交通省告示 第1168号(煙突まわりの構造)
・消防法 第9条(火の使用に関する規制)
・火災予防条例(各市町村)
煙突トップの種類
煙突のトップに関しては、
法的に最低限の高さや離隔距離が決まっている。
それらを順守したうえで、
さまざまなバリエーションのトップを選んでいただきたい。
角トップ(ガラリ仕様)
角トップで昔から使われている形状。
タイル張りの外観と調和する高級感あふれるタイプ。
ガラリをつけることにより雨仕舞は良い。
袋ナットで固定された天板をはずして掃除する
ガラリに接してエキスパンドメタルで防鳥対策をしている。
煙突の周りを防鳥金網でかこうタイプ。
ガラリの隙間は小鳥が容易に入り込めるおおきさなので、
巣を作りには絶好の場所となる。
煙がモクモクでている季節に近寄ることは無いが、
シーズンオフには狙われる。
年に一度は、はずして巣作りされていないかを確認しなければならない。
角トップ(エキスパンドメタル仕様)
外観
上記のガラリ仕様からガラリを省略した形である。
天板と煙突口の距離がこれくらいであれば、
ガラリをつけなくても雨は吹き込まないのだろう。
防鳥対策にエキスパンドメタルを使用
頂部の鉄板は4箇所の17mmふくろナットで固定。
頂部の鉄板とその下にあったグラスウールがはめ込まれた底板鉄板をはずした状態。
上からブラシを入れてススを落とす。
バキュースタック(ドラフトスムーサー)
バキュースタックは、煙の排気力が良好になる排気トップ。
建物周辺の地形条件や強風により排煙が逆流する場合に特に効果的。
風が強くなる程に排気力が増すしくみになっている。
自宅はこれですが、いままで20年間どんな強風でも、
煙が逆流してきたことはありません。
デメリットは羽が入り組んでいるので
はずさないときれいに掃除できないこと。
屋根からの上げ下ろしが面倒。
鳥の巣は作られたことはないが、
スズメが2回ほど薪ストーブまで落ちてきたことがあります。
遊んでいて足を踏み外したのでしょう。
鳥は垂直上昇できないんですね。
丸トップ
丸トップは、ロッキングバンドを取り外して、
煙突を反時計回りに回せば簡単にに取り外しできる。
T笠、H笠、丸型トップ
いずれも106Φシングル管に接続する廉価版のトップである。
画像はホンマ製作所HPより
【T笠】
最低限のトップ。最安値。
【H笠】
仕事場で使っている時計型ストーブの煙突のトップ。
雨の吹込みがなく、煙の抜けも良好。
【丸型トップ】
ススがこびりつきやすい。
煙突の温度
薪ストーブが燃焼している時、
煙突の内部は250度以上の高温となり、
149度以下になると煙突内に、ススやタールがこびりつく。
シングル煙突と2重煙突
シングル煙突は軽量なので取扱いも楽で、
各部材とも安いので設置コストを最小限に納めることができる。
しかし、ススやタールがつきやすいので
最低月1回くらいこまめに煙突掃除をしなければならない。
シーズンオフには煙突をはずしてしまうことも可能だ。
外気温の影響を受けないようにするため2重煙突が使われる。
予算が許せば、外部のみならず内部にも使いたい。
煙突からの放熱は得られなくなるが
そのほうが薪ストーブ本来の性能が引き出せるのだ。
煙突まわりの壁や天井内部の隠れ炭化の心配をしなくても済むしね。
煙突ガード
シングル煙突の場合、高温になるので触って火傷をしないように、煙突ガードがある。
また、アウトドア関連では、テント内で薪ストーブを焚くのがブームのようだが、
煙突がテントを貫通する部分でテント地が、
煙突に触れないようにするアダプターがあるようだ。
2重煙突とは
径の異なる2つの管をつかって1本の菅にする。
内側と外側の菅の間隔は25mm
内径+5センチが外径となる。
二重管の呼び径は内径
したがって150Φの二重管の外径は200Φである。
2重煙突の種類
2種類あり、
1つは、断熱材は入らず空気層のもの、
もう一つは、セラミックファイバー断熱材が入ったもの。
性能は断熱材入りの方がよく、
空気層断熱式二重煙突は、
気温が氷点下にならない比較的温暖な地域で使われる。
断熱材入り二重煙突は、
寒冷地で使われる。
加工が難しいのであろう、値段がビックリするほど高い。
2重煙突のメリット・デメリット
メリットはドラフトを容易に発生させて薪ストーブ本体の性能を限りなく引き出せることだろう。
デメリットは、部材のコストが高いこと、重量があるので設置が大変なことだろう。
ちなみに通販で購入できるホンマ製作所の煙突部材の価格(2020年2月3日現在)で比較してみよう。
この金額差だと良いのはわかっているが、使うのに勇気がいるよね。
内径
|
シングル
ステンレス0.3mm
ハゼ折り
有効長830mm
|
2重(空気層断熱)
ステンレス0.4mm
ハゼ折り
有効長813mm
|
2重(断熱材入り)
ステンレス0.5mm
溶接
有効長1000mm
|
106Φ
直筒
|
950円
|
14,180円
|
なし
|
120Φ
直筒
|
1,140円
|
15,510円
|
18,610円
|
150Φ
直筒
|
2,380円
|
17,380円
|
21,700円
|
特徴
|
軽量
低コスト
|
軽量
低コスト
安全性〇
|
堅牢
タール漏れ防止
安全性〇
寒冷地〇
|
金額は全て税込み
煙突掃除
薪ストーブユーザーにとっての悩みの種NO1が煙突そうじでしょう。
でも、必ず年に1度は掃除するようにしましょう。
煙突内火災や鳥の巣火災にならないように。
自分ではできない人は、薪ストーブを設置した業者に頼めば、
有料(約3万円~)でやってくれると思います。
煤掃除の方法
家の中からスス掃除をする場合と、
屋根にのぼってする場合があります。
どちらにしてもトップの点検はしなければいけないので、
屋根にのぼることにはなります。
室内側からの掃除
屋根にのぼるよりは安全な方法だ。
しっかり養生をしてあげないと、室内がススでよごれる。
薪ストーブ本体の掃除やメンテナンスと一緒にやるのがよいだろう。
薪ストーブ設置後、1シーズンを経た秋に初回の煙突そうじをした。
初めは業者に頼んでやってもらい、事細かくやり方を観察した。
次回からは自分でやるので。
手順として、
まず掃除ブラシをいれて上下させる空間が必要なので、
薪ストーブと接続している煙突を1,2本外す。
ビニールゴミ袋に1か所ブラシの柄を通す穴をあけて、
ブラシを入れて柄の接続部分を出した状態で、
煙突口にガムテープでしっかり固定する。
そこから柄を継ぎ足しながら小刻みに上下させてススを落としていく。
トップに到達するとブラシが当たって進めなくなるので、
今度は小刻みに上下させながら柄を取り外していき、
出口まで来たらビニール袋を取って終了となる。
薪ストーブ本体も煙突接続部分には灰が溜まっているので掃除機で吸う。
屋上にて煙突トップを取り外したのを、付け直す。
この日の成果
カラッカラパリパリに乾燥したスス
我が家の煙突は曲り無しで真っすぐ屋上のトップまで伸びているので
このように最小限の煙突の取り外しで済むが、
曲りのある場合、
たとえ45度の曲りであっても
そこから先はブラシが進めないのでススがとれない。
曲り部分がススが溜まる場所なんだけど。
曲りの部分まで煙突を外すしかありません。
このように煙突掃除のことまで考えて薪ストーブの配置プランを考えておこう。
▼僕はゴミ袋派だが、煙突用品として商品化されたものもあるみたいだよ。
▼16回目の煙突そうじ
屋外側からの掃除
できることなら、
トップの点検(鳥が巣を作っていないか?)を含めて、
屋上に上がって上からブラシを下ろしたい。
室内側には
薪ストーブとの接続部分の煙突を外した部分を
ビニールゴミ袋で密閉しススが室内に飛び散らないようにする。
屋根の勾配は4寸勾配が、
素人がのぼってメンテナンスできる限界であろう。
自宅は、3寸勾配なので無難に歩行できる。
友人の家の4寸勾配の屋根にのぼって
メンテナンスのお手伝いをした時は、
足元から滑りそうで身の危険を感じた。
これ以上なら屋根足場や命綱ロープを使う必要がありそうだ。
掃除道具
年に一度しか使わないものだけど、自分で掃除すなら必要になります。
業者に頼むと3万円~となるので、1回で元は取れると思う。
掃除機
シーズンオフに使うから火の粉を吸うことは無いけど、
奥深くの隙間から灰を吸い込める強力な吸引力の掃除機があればベスト。
僕はDIYで屋外で使っている掃除機を使っている。
ブラシ
自宅の150Φ煙突用のブラシと棒。
▼仕事場の時計型ストーブ106Φ用のブラシと棒
まとめ
煙突の重要性をいくらかでもおわかりいただけただろうか?
煙突は奥が深いのだ。
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