薪ストーブ火災をひきおこす低温炭化と煙道火災について

薪ストーブ設置

薪ストーブによる建物火災の2大要因として、低温炭化と煙道火災があげられます。
安全な薪ストーブ生活を送る上でも、ぜひとも知っておきたいですね。

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薪ストーブによる低温炭化とは

薪ストーブを設置しているほとんどは木造住宅と思われる。
木造住宅の方は注意深く読んでほしい。

木造住宅では内装仕上げの奥に隠れている下地材は、
天井には野縁、壁には胴縁・間柱・柱、
床には根太・大引などと呼ばれる部材が木材である。

木材は、100℃程度の低温でも
長期間に渡って熱にさらされ続けると炭化し、
熱を蓄積して、発火することがある。

これがある日突然なんの前触れもなく起るから怖い。

低温炭化の原因

薪ストーブから発生する熱の伝わり方には、
大きく分けて2つの方式がある。

ストーブ表面から赤外線を発し到達したものを直接暖める輻射方式と、
熱せられた空気の移動を利用する対流方式がある。

対流方式は薪ストーブ本体の表面はあまり熱くならないが、
輻射方式は表面がかなりの熱を持つので、
低温炭化につながるのは、当然、輻射方式であろう。

だから輻射方式が悪いからやめましょうという話ではない。

赤外線放射による輻射熱は体の芯から温まるのだから。

適正な離隔距離をとって
内装の仕上げ面が熱くならないようにすることである。

離隔距離を縮めるため、
メーカー側で薪ストーブ本体に遮熱板を
オプションで取り付けてくれるのもあるから
もしあれば採用するにこしたことはない。

金属板は燃えないからと
下地材に直接貼り付けることは厳禁。

熱くなった金属板に接触している木材は
容易に炭化してしまう。

ラーメン屋さんでは、
寸胴で出汁を取るために長時間煮続けることをするが、
手抜き工事をされて
レンジ周りのステンレス板の
下地から発火して火事になることがたまにある。

ステンレス板は確かに輻射熱は反射させるが、
熱くなってしまうので木材との間に
断熱効果のある材料とか空気層を挟まなくてはいけない。

ちなみに、空気層は最高レベルの断熱材である。

低温炭化の対策

日本に限ったことではなく、
世界中の薪ストーブを使っている先進国でも
これは大問題でさまざまな対処方法が取られている。

輸入薪ストーブの取扱説明書にも示されており、
本体を設置する輸入代理店・販売店では
講習会で勉強しているのでよく聞いてみたら良いだろう。

熱の発生源の本体と煙突から、
その熱量に応じた離隔距離をとり、
面する範囲を不燃材で作り断熱層を設けることが重要である。

面する炉台・遮熱板を
どのような材料で
どのくらいの範囲を作ればよいかは、
【平成21年国土交通省告示第225号】
準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める告示  に示されているとおりである。

DIYで炉台や遮熱板を作ろうとしているならば、
必ず目を通しておいてもらいたい条文である。

消防では、低温炭化が原因となる火災原因として「低温発火」とはっきり定義されている。
その内容を、下記に引用しておきます。

低温発火とは

低温発火とはどのような現象でしょうか。熱源からの熱が木材に与えられ、始めは木材の水分などが蒸発し、木材が多孔質化してゆきます。多孔質化した木材は断熱性が良く、熱が逃げにくい材料になってゆきます。その結果、低い温度100~150℃(この温度より低い温度でも周りの状況によっては)で加熱されても木材内部で蓄熱が起こり、ついには引火温度や発火温度にまで達して燃え出すことになります。このような現象を低温発火といいます。 例えば、コンロにより近くの壁材が長い間加熱されて発火する場合、風呂の煙突や暖房のスチーム管に接している木材が長い間加熱されて発火する場合などは、低温発火の可能性が高いです。

では低温発火を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
次のいくつかの方法があげられます。

・コンロと壁との距離を十分とる
・距離をとれない場合は熱を伝えない材料を壁との間にはさむなどの対処をする
・ある程度温度の高い物質と材料の距離は離す

引用元:消防庁消防大学校消防研究センター  

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薪ストーブの煙道火災とは

煙道火災の原因

タールが煙突にたまり、
薪ストーブが過熱した時に、
タールが発火して煙突内部で火災がおきる。

煙突内にタールがたまる原因として

  • 未乾燥の薪を焚く
  • 空気を絞って焚く

があげられる。

いづれも低温で不完全燃焼で焚くことで
タールが発生することが根本原因である。

煙道火災の対策と対処法

原因となるタールを発生させない、
ためないようにして運転することである。

そのために

  • 乾燥薪を焚く
  • 完全燃焼させる

ということであり、
煙突掃除も欠かしてはいけない大事なことである。

万が一、煙道火災になってしまったら、
慌てずに、
薪ストーブ本体の空気調節レバーを締めて、
空気を遮断する。

これしかないです。

炉内で燃えている薪を取り出そうとして
扉を開けるなど厳禁!!
空気が供給されて火勢が増してしまいます。

室内がシングル煙突だと
赤みを帯びるほど発熱して不安になると思いますが、
こんなときは壁・天井に燃え移った時にすぐ使えるように
消火器を準備して見守ることしかないです。

精神安定のためにも
消火器はぜひとも用意しておこう。

煙道火災は
薪ストーブを使う世界中で起こっていることで、
薪ストーブ先進国のノルウェーの
ベストセラー本のなかにこんな記述もある。

煙道火災
炉と煙突からの異常なうなり音で煙道火災に気づく。そとでは煙突から火の粉や炎が上がっているので、近所のひとや通りすがりのひとが煙道火災を知らせてくれることもある。乾燥煤による小さな煙道火災そのものはわりと控えめで、もっと言えば、これで煙突の煤を除去できる場合もあるのだが、タールによる火災は別物だ。1200度以上に温度が上がり、大きなかけらが剥がれ落ちて煙突管をつまらせたり、ストーブの中に落ちてきたりする。あまりにも高温になるため煙突が割れたり、部屋の天井や床に火が付くこともある。煙道火災防止になによりも大切なことは、乾燥した薪でストーブを正しく焚くことである。第二に、煙突を定期的に掃除することだ。

引用元:薪を焚く(晶文社)

まとめ

設置前に検討しておくこととして、離隔距離、炉台・遮熱板について、と、設置後のこまめな煙突掃除がしやすいような煙突設計が大事だということがおわかりいただけただろうか?

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薪ストーブを住宅に設置する場合に注意すること

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