薪ストーブを住宅に設置する場合に注意すること

薪ストーブ設置

煙突と一体となった薪ストーブを建物内部に設置する場合、建物側でもいろいろと規制されることがある。
火気を使用し火災の原因ともなることだから、とても重要なことである。
施工業者はもちろん知っておくべきことだが、オーナーのあなたも知っておくと、導入後のセルフメンテナンスの時にその知識は役立つだろう。

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薪ストーブの設置基準とは?

薪ストーブを使うということは火気を使用すること。

火災の原因につながる為、きびしい規制がかかりるのは当然のこと。

住宅に薪ストーブを導入する場合にも、
建築基準法と消防法の規制がかかってくる。

最低限、それらの規制はクリアしなければなりません。

建築基準法による規制とは?

根拠条文【 建築基準法第35条の2 】

薪ストーブを設置する場合、その部屋は「火気使用室」の扱いとなり、建築基準法で内装制限という規制がかかる。

具体的には、2階建ての1階部分に設置すると、
その部屋すべてを、
準不燃材以上の耐火性能のある材料で、
壁・天井を作らなければいけない。

だから木材の板張りは違法ということになる。

でも、平屋や2階建ての2階部分に
薪ストーブを設置するならば、
その内装制限はかからない。

内装制限の緩和

薪ストーブ以外でも火気使用といえば、
今流行のアイランドキッチン(オープンキッチン)や
壁付暖炉やいろりも
全て同じ扱いを受けるので、
ログハウスなど木材を内装としている一戸建て住宅では、
2階建ての1階部分に設置するのは、
実は違法だったんだね。

でも、知らないでやっていたケースも
たぶんあったことだろう。

中古住宅を買って
あとから薪ストーブを設置したいと思ったが、
部屋全体の内装まで手をかけなくてはいけない、
そうすると高額な工事費になる。

やっぱりやめる、か、
知らなかったことにする。
という悪循環に陥ることだろう。

そんな諸事情を勘案してのことだろう、
内装制限に緩和規定が設けられた。

根拠条文【平成21年国土交通省告示第225号】
準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める告示

である。

本告示は、火気使用設備周辺とそれ以外の部分における着火リスクの違いに着目し、火気使用設備周辺については不燃材料による内装の強化や遮熱板の設置等の措置を要求する代わりに、それ以外の部分については木材や難燃材料による内装を許容するものとした。

ここで、
告示本文もリンクされてはいるが、
読んでもチンプンカンプンである。

この告示の計算式に、
使用する薪ストーブのデータ値を入れると、
下地や仕上げを「特定不燃材料」で作れば良い範囲が
割り出されるというものである。

分かりやすいアプリとか開発されれば
使って範囲を知りたいと思うが、
でなければ、面倒くさいやめておこう
となりそうな実にわかりにくい条文である。

結局は薪ストーブメーカーの
技術基準にしたがっていれば間違いないだろう。

煙突と建物に関する規制

根拠条文【国土交通省告示1168号】

煙突が小屋裏、天井裏、床裏等を貫通する場合は、
その部分を不燃材料で作り断熱する
もしくは断熱2重煙突を使う。

消防法による規制とは?

もしも住んでる場所が
「準防火地域」や「防火地域」になっている場合は、
消防署に消防設計審査の届出が
必要になるので注意が必要。

役所の都市計画課に住所をいって問い合せれば、
準防火地域や防火地域なのかわかります。
ほとんどが町の中心部でしょうから、
田舎に住んでいて薪ストーブを入れようとしている人は
大丈夫だとは思いますけどね。

周囲の構造

薪ストーブが置かれる周囲の
壁・天井について細かく規制される。

床は内装制限はかからないものの、
薪を投入する際に火の粉が飛び散らないとも限らない。
また薪ストーブの底面からの放熱量は
かなりのものだから、
必然的に炉台の仕様は決まってくる。

炉台

メーカーのカタログから薪ストーブの機種ごとに、
壁からの離隔距離について出ているので、
それに従えば炉台にしなければならない範囲がわかるだろう。

炉台は火の粉で焼け焦げないよう不燃材料でつくらなければいけない。

金属板は不燃材料ではあるが、
薪ストーブ底面の熱によって
金属板の下が低温炭化しないように、
断熱材を合わせて使わなければならない。

部屋が広くて動線の重ならないところに
薪ストーブの炉台があれば良いが、
大体は頻繁に歩くところに炉台がくることが多く、
歩きにくく、つまずいたりして危ない。

そんな場合は、
床の段差のない面一な
バリアフリーに仕上げたい。

床下で不燃材料との仕上げ厚さを解消する
細工をするのだ。

面倒な工事だけど、これをしておくと、
あとあと不満は出てこないだろう。

遮熱板

総務省令第24号に薪ストーブの離隔距離についてしめされている。

薪ストーブ本体の表面から、
前方に、150cm以上
後方に、100cm以上
側方に、100cm以上
上方に、150cm以上

となっている。

例えば、ヨツールのF500(W758 D524 H724)
を置くと仮定すると、
これ1台のために
約5帖で天井高2.3mの空間が必要となる。

この数値はあくまで大前提であり、
日本の住宅事情では
このような離隔寸法の確保はむずかしいだろう。

その場合、「消防庁長官が定める距離」を確保すれば良いとされている。

「消防庁長官が定める距離」がこれまたわかりにくいのだが、
一応、紹介しておく。

消防法告示1号では、近接する可燃物の表面温度の許容最高温度として、100℃を規定しており、この許容最高温度を超えない距離または引火しない距離のうち長い方の距離を離隔距離の決定としている。

引用元:消防法告示1号

こんなの現場じゃ使えないよね。

消防法上の離隔距離についてはここまでにして、
実際、日本の住宅事情に則して薪ストーブを設置するには、
どのような形状・規模の壁を作ればよいのだろうか?

ここで、前述した【平成21年国土交通省告示第225号】
準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める告示
がでてくるのだ。

ここの計算式で出た数値以上の性能の「遮熱板」で
背面及び側面を囲えばよいという結論となる。

法的規制はないが、
お子さんがまだ小さい場合は、
柵で囲んでいれば気休めにはなるだろう。

薪を運んだりくべたりする時には、
邪魔かもしれませんけど。

うちでは子供2人とも薪ストーブで育ちましたが、
言って聞かせて火の怖さは理解したらしく、
柵は設置しなかったけど火傷はしませんでしたね。

僕の方が、
薪をくべる時に
2回ほど腕に火傷と服を焦がした。

シーリングファン

これも法的規制はないが、
吹き抜けに薪ストーブを設置する場合は、
忘れずに設置したい設備だ。

薪ストーブで温められた空気は
上へ上へと昇っていき溜まってしまい、
1階の床付近はうすら寒い状態になってしまう。

シーリングファンは天井付近の空気を攪拌して
上下の温度差を少なくする効果がある。

また、吹き抜けの場合は、
厳冬期になると
シーリングファンでは追いつかなくなるので、
床暖房の助けが欲しくなったりする。

離隔距離とは?

ここで、あらためておさらいだが、
どういうことなのだろうか?

離隔距離は、熱の発生する表面(機器、煙突コネクタ、煙突)
と可燃物とのスペースと定義される。
また、離隔距離は空気層として定義されることもある。

空気は他の素材と比べて格段に熱伝導率が低いので、
最も有効な断熱手段なのである。

離隔と保護の違い

「離隔」とは、熱せられた空気を
近接する可燃物から遠ざけることであり、
常に空気層を含む。

「保護」とは、熱源と可燃物のあいだに、
セメントや金属などの不燃材料を使用すること。

保護することで、
一定の離隔距離を縮めることができるが、
それでも空気層による離隔は必要となる。

間取りを考えるポイントとは?

薪ストーブの暖房能力を参考にして、
暖房範囲を決める。

薪ストーブだけで全館暖房するのか、
補助暖房を使うのか方針を決める。

全館暖房するのであれば、
吹き抜けのある断面構成を考えておく。

暖房能力が坪、帖、㎡でカタログに表示されていれば、
天井高を2.4mとして容積に変換してしておけば、
吹き抜けの場合の計算がしやすくなる。

・坪=㎡×0.3025
・帖=㎡÷1.62

平面と断面を加味した空間構成で考えよう。

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薪ストーブの焚き方のコツ

薪ストーブは木を燃料とする暖房機器である。

燃焼の基本法則は、
・燃やすためには十分な酸素と燃料が必要
・暖められた空気は上に上る
である。

このことをよく理解して運転しよう。

薪ストーブの基本的な運転方法の要点を順を追って説明すると、

1)慣らし運転:使い始めは必ず。

2)着火準備:よく乾燥した薪を使う

3)ダンパー、空気取入口を開ける:着火には十分な空気が必要

4)着火:細い焚付けから徐々に太い薪へ

5)燃焼の維持:熾火を作りながら、薪は空気が通るように置く

6)消火:空気を遮断すれば消火する

7)灰の処理:炉床にたまった灰は少し残す。

薪ストーブを良好に燃焼させるには?

薪ストーブでは理想的な燃焼をさせるには、
適切なドラフト(上昇気流による排煙と新鮮空気の給気)管理が重要となる。

そのキーポイントは、

1)煙突の適切な形状と高さ

2)煙突は単一排気とし兼用は不可

3)タールの発生を抑制する

4)バックパフィング

5)室負圧を避ける

重要:薪ストーブの安全性

安全性は何よりも優先されることであり、けっしておろそかにしてはいけない。

安全性を確保するためのチェックポイントは、

1)過熱防止

2)火傷防止

3)ゴミの焼却禁止

4)可燃物を近づけない

5)火災防止設備を設置

6)煙道火災の対処

7)低温炭化による火災のメカニズムを知る

薪ストーブのメンテナンスは?

メンテナンスは薪ストーブを安全に、快適に、長く使うためにしておこう。
どんなメンテナンスが必要で、スケジュールや消耗品について知っておくことは重要である。

1)日常のメンテナンス:ドアガラスの清掃、灰受け皿の清掃

2)シーズン初め又は終了時:煙突の点検と清掃、炉内の清掃点検、ガスケットの点検、可動部の調整、ダンパーの調整、

3)3~5年に1回:専門家によるフルメンテナンス

4)部品交換:消耗品(ガスケット、コンバスター)の定期交換

メンテナンス費用は?

煙突そうじは業者に頼むと、
3万円くらいでやってもらえるけど、
難易度によって金額はかわってくるので注意したい。

例えば屋根勾配がきつかったり、
屋内で煙突の曲りがあったりして、
足場を組まなければ作業できない場合などは高額になる。

消耗品のガスケットはホームセンターにも置いてあるし、
難しい作業ではないので自分で交換にチャレンジしてみるのも良いだろう。

触媒(コンバスター)を使った2次燃焼方式の薪ストーブの場合、
5年に1回程度の割合で、性能が落ちてくるため触媒を交換しなくてはいけなくなる。
2~3万円程度の出費となるらしい。

2次燃焼方式でもクリーンバーン方式は
その必要はなく出費をおさえることができるので、
そちらがおススメだね。

まとめ

木を燃やして暖かくする、大昔からある原始的な暖房方法の薪ストーブ。
これを現代の住宅の中で使うのだから、この程度の規制は仕方無いこと知り、
安全で快適な薪ストーブライフを送りましょう。

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